僧侶が解説する5分でわかる臨済宗の焼香のやり方
この記事にたどり着いたということは臨済宗の焼香のやり方についてお調べになられている最中だと思います。
焼香は、仏教と共に日本に伝わった習慣と言われますが、長い年月を経て、同じ日本仏教であっても宗派によって焼香の作法、やり方に違いが生じました。みんなが同じ宗派のお寺の檀家さんであれば、前の人の真似をすれば済むのですが、実際にはそんなことはほとんどありませんので、自らが檀家となっているお寺の宗派のやり方を覚える必要があります。
しかし、ネットで検索をかけると、様々なサイトで焼香のやり方が記載されているものの、出典や根拠が示されておられず、信憑性が疑わしいものも散見されます。
そこで、今回は“臨済宗”の僧侶である筆者が、臨済宗の焼香のやり方・焼香する意味を解説します。あなたが臨済宗のお寺の檀家さんであるならば、今後焼香のやり方で困ることは無くなるはずです。
目次
臨済宗の焼香のやり方
1,焼香台の前に進むと合掌し、一礼します。
2,右手の親指・人差し指・中指の三指で香をつまみ、そのまま香炭の上にくべます。この際には高所から落とすことは戒められます。宗派によっては額に押し頂くところもありますが、臨済宗ではしません。
3,香をくべ終わったら最後に合掌し、一礼して下がります。
臨済宗では、焼香の回数は特に定まっていませんが一回で十分です。葬儀の際などは特に多くの方が参列して焼香されますので、次の方のことも考えて手早く焼香することも必要となります。
このように「香を焚く」のは、古代インドにおいてはご遺体の消臭という実用的な面があったようですが、それだけでなく下記の理由が挙げられます。
- 敬意を示すこと
- 空間を浄めること
- 故人の食物と考えられること
それぞれを説明しましょう。
焼香によって敬意を示す
インド発祥のヒンドゥー教や仏教の経典を読んでみると、神々が住まう世界には香木のよき香りが漂っている描写があり、よき香りがポジティブなものとして捉えられていることが分かります。
また、インドでは来客の際、客人の手首に香油をつける歓迎作法がありますが、これは日本のお寺で来客の際、床の間に香を焚く習慣と関連があるのでしょう。
このように“香”を焚いたり、つけたりすることは相手への敬意を示します。お釈迦様の最期が記される『大パリニッバーナ経』にはお釈迦様のご遺体に信者たちが香をお供えする様子が記されています。
焼香によって空間を浄める
日本仏教でも宗派によっては内陣など聖なる空間に入る際に香を粉末状にした“塗香(ずこう)”を手に塗る作法がありますが、臨済宗の行事でも最初に香を焚き、その上でお供えものを薫じます。これらは香に身心や空間を浄める作用があると信仰されるからです。
香りは故人の食物
インドでは、「人生一度きり」ではなく、生き物は「生まれ変わり死に変わりを繰り返す」と考えます。
そのような環境で興った仏教も同様の死生観を持ちますが、同じ仏教の中でも「死んでから即座に生まれ変わる」と考えるグループと、「死んでから生まれ変わるまでに猶予がある」と考えるグループに分かれます。
その内、北西インドのガンダーラを本拠地にした仏教グループ“説一切有部(せついっさいうぶ)”は後者と考えており、この猶予期間を“中陰(四十九日)”といいます。日本で四十九日の間を特別視するのは、このグループの影響を受けているからです。
また、説一切有部の教義がまとめられた『倶舎論(くしゃろん)』という論書には、「四十九日の間(の故人)は香りを食物とする」と記されており、これは「四十九日の間は線香を絶やしてはいけない」という言い伝えの根拠となっています。葬儀の際に参列者は“香奠(香を供えるの意)”を持参するのも上記の理由からです。
まとめ
ここで解説した臨済宗の焼香のやり方を実践して頂くと、折り目正しい焼香がなされ、故人にも遺族にも皆さんの弔意が通じることと思います。
最後に今回の記事を確認します。
臨済宗の焼香は、
- 右手の親指・人差し指・中指の三指で香をつかむ
- 額には押し頂かない
- 高所から落とさない
また、香を焚くのは、
- 敬意を示すこと
- 空間を浄めること
- 故人の食物と考えられること
から行われます。是非とも覚えておいて下さい。この記事が皆さんにとって善き縁となることをお祈りします。
【参考】
- 『現代寺庭要訓』妙心寺派宗務本所
- 『倶舎~絶ゆることなき法の流れ』龍谷大学仏教学叢書
- 『江湖法式梵唄抄』法式梵唄刊行会・禅文化研究所
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